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秋は私とそんなに身長が変わりません。私が女の子の中ではちょぴっと高い方だからだと思いますが、それでも少し秋の方が高いです。そんな秋と一緒に並んで歩くのはなんだかうきうきします。
眺めているだけの秋だと無表情……まではいかないけど、ぼーっとしているというか、普通な感じ。でもおしゃべりを始めるといろんな表情でしゃべってくれるところが、なんだかいいなって思います。
私たちは一緒に駅まで行き、電車に乗って、試験を受ける高校まで向かいます。
しばらく電車に乗っていると、見たことない柄の学生服を着た人たちがたくさん乗ってきています。今日はイスに座れなかったので立ったままです。
秋はドアの横にもたれていて、私はそこの取っ手を握っています。
「今日もそれ付けてんだな」
私のひいおばあちゃんが付けていた髪飾りらしいです。古い物のようだけど、薄い茶色から濃い茶色へきれいにグラデーションしている髪飾りです。
「なでなでする?」
「……じゃ、じゃあ」
私はちょっと横に向きました。秋は髪飾りをなでなでしています。
「今日の試験、成功しますように」
「よろしくお願いします」
私たちはあんまりしゃべることのないまま、高校の最寄駅に着きました。
たくさんの人が流れていくのに合わせて私たちも降りていきました。
改札を通って外に出ると、やっぱりいろんな制服を着た人たちが高校へ向かっていっているようです。
「いよいよだね」
「ああ」
「自信のほどは」
私は手でマイクを作って秋に向けました。
「あ、あんまりないですけど、でも合格しなきゃ雪奈と一緒に行けないから……頑張ります」
「頑張ろうね」
私たちは学校に向かって歩き始めました。
「なぁ雪奈」
「なに?」
一緒に横に並んで歩きながら秋が私にしゃべりかけてくれました。
「雪奈は……本当にここでよかったのか?」
「よかったからここにいるんです」
「すんません」
秋と並んで歩くのはいっぱいしてきたけれども、今日が最も緊張していると思います。
「……頑張ろうな」
「頑張ろうね」
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