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耳障りな市役所放送が午後の街中に流れ始めた。ひと昔前は、行方不明のお年寄りの放送に使われた、あの異様に間延びした声だ。
「〇〇市役所からぁ~、お知らせしまーすーただいまー午前13時をもちましてー
〇〇市は生存~実技試験~を開催します。住民の皆様の~ご検討を~祈りますー繰り返します~」
その時の通行人の反応は大きく3つ。1つは泣き叫び、近くに子供がいる奴は子供を
抱きしめる者。2つ目は車なり、自転車なりに乗りこむ者。
最後はそんな奴等を見つめ、
「別に何にも動じてないぜ?」
を気取るか、それすらもできず、とりあえずいつもの習慣、黒い携帯端末を取り出し、
画面を見つめるか誰かのSNSを見て「いいね」する棒立ち“習慣厨”共だ。
町の入口の方から機械音と銃声が連続して鳴り渡ってくる。悲鳴と怒声が
連続して響き、徐々に近づいてきた。角のコンビニのガラスが砕け、店員とおぼしき
制服を着た女らしきものが飛び出してくる。“らしき”と表現したのは
頭部にへばりついた長髪と可愛らしい髪留めの残骸が僅かに見れたからだ。
通りに残った奴等のウルセェ悲鳴と、こんな事態になっても“携帯”を離せないアホの
内蔵シャッター音が連続して通りを震わす。
やがてゆっくりとした歩行駆動音と共に、我が国の軍隊?自衛隊お下がりの“64式小銃”
を構えた
(現役をとっくに退いてるが、3万丁近く倉庫に眠っていたのを“奴等”が試験優先効率化のため使い始めた。まぁ、生身の人間相手なら、減速されたライフル弾でも充分に事足りる
(自衛隊発足当初の銃のため、火薬量は減らされている。)ってもんだ)
無表情のマネキン面と成人男性くらいの背の金属ボディ、
AI(人口知能)自立歩行型生存試験管、通称“ヒトガリ”が、
その細見なフォルムを軋ませ、姿を現した…
驚愕に目を見開いた(お守りみたいに携帯握ってる馬鹿もいたが)奴等が、
ヒトガリの射的カーニバルの的にされ始めた。肉片と血しぶきを上げ、地面に転がり始める彼等を無視し、俺は素早く背を向け、走り出す。
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