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春雪
大学生は飲み会が好きだ。
酒を飲むことが好きなのか、誰かと一緒にいることが好きなのか。それとも他に飲み会ならではの楽しみがあるのか。人それぞれにその理由は違っても、とにかくことあるごとに飲み会を開きたがる。
そして、飲み会を開きたがる彼らは、基本的に誰もが飲み会が好きだと思い込んでいる。たぶん彼らの中では、「人類は飲み会が好きだ」くらいの認識があるに違いない。
そんなことを思いながら、藤崎相也は誰もいなくなった部屋をぐるりと見渡した。飲み会に来ると、最後にこうして誰かの忘れ物がないか確認するのが、相也の癖だった。
大学生の長い春休みも終わりが見えてきた三月中旬。相也の所属する教育学部社会専修西洋史研究室――通称「西洋研」――の新三四年生たちは、駅前の居酒屋で飲み会を開いていた。名目は春から正式に西洋研に入ることが決まった新三年の歓迎会と、新四年の卒論に向けた決起集会を兼ねて、というものである。
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