ディン・ディディン平成を歩く

平成14年 W杯で沸く渋谷でディン・ディディンと会う

次にディン・ディディンと出会ったのは平成14年、2002年の年だった。

この年の6月にワールドカップが日韓共同で開催されて、それはもう盛り上がった。
日本が試合に勝つと渋谷の駅前交差点に若者が大量に集まった。面白そうだったので、俺も渋谷に行ってみた。

何かお祭りごとがあると渋谷の交差点に集まって騒ぐようになったのはこの頃からだ。それまで渋谷は流行の発信地ではあったものの、交差点で集まって騒ぐような場所ではなかった。渋谷の交差点歩きながら道行く人とハイタッチしていくのは新鮮で面白かった。そういう一体になるような出来事がなかったからな。

ハイタッチしている手の中でひときわ大きい手があった。それがディン・ディディンだった。間違いない。髭だらけの顔にサングラス、2メートルはある巨体は渋谷の雑踏の中でも目立つ。

ディン・ディディンは道行く人とハイタッチしていたので、他の人にも見えているはずだ。俺の妄想ではない。しかし、現実感のない不思議な男だ。俺は、人ごみをかき分けてディン・ディディンに近づいた。