平成13年 同時多発テロの映像でディン・ディディンを見かける

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平成13年 同時多発テロの映像でディン・ディディンを見かける

平成13年。西暦で言えば2001年。この年の9月11日は忘れられねえよ。 頭の悪い俺は2浪しても偏差値の低い大学にしか入れなかった。しかし、まあそれなりに頑張って勉強はする真面目な文系の学生ではあった。 かっちゃんは私立の理系の大学に現役合格していた。有名な良い大学だったから、俺はすげえなと思ってたんだけど。 かっちゃんは練炭自殺を試みた。幸い、見つかって一命はとりとめたんだけど。病院行って無事は確認したものの、俺はかっちゃんに対してうまい言葉をかけてやれなかった。 この当時はネットがやっと浸透し始めたばかりの頃で、ネットで自殺仲間集めて集団自殺するっていうのがあちこちで起きていた。まさか、優しくて頭もいいかっちゃんが自殺試みるとか思わねえよ。 就職活動がうまく行ってなかったらしい。50連敗だったかな。就職氷河期と言われてた時期だからな。しょうがねえよ。この当時、大学生だった奴らは皆就職活動に苦労してる。今の学生も大変だろうけど。 病院の待合室のテレビではアメリカの貿易センタービルに飛行機が突っ込んで大惨事が起きてる映像が流れていた。 まったく、世の中なんで不条理なことばっかり起きるんだよ。 次の日も大学の友人との間でアメリカのテロの話題で持ち切りだった。テレビでもずっとこのニュースを取り上げていた。「テロ」という単語が色んな場面で出てくるようになったのはこの頃からだったよなあ、と思う。 俺は世の不条理を感じながら、アメリカ同時多発テロの映像を眺めていた。救助活動をする人の中にディン・ディディンらしき人物を見つけた。体格の大きい髭の男ならアメリカにはたくさんいるから見間違いだったのかもしれない。
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