2/10
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ
がらんと音を立てて缶ジュースが自動販売機から生み落とされる様子を見ると、私は、どうしても目を背けずにはいられない。玉の汗を額にはりつけ、うだるような暑さに辟易する夏の日であったって、鳥肌のたった腕をさすらずにはいられない。そうしてあの雪の夜を思い出す。私は水分が怖い。水分を摂取することは、罪であるのだ。 今から考えると、私はいくぶん洗脳めいた育て方をされてきたのだろう。ただし、私だけではない。父も、母も、隣人も、学校の先生も、スーパーのレジ打ちのお姉さんも、一国一城の主である町長でさえ、そうやって育てられてきた。 私は水分が怖い。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!