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始まりは小学校の入学式。広い体育館に集められて私たちは、校長のありがたいお話を聞くべくして集められた。かっぷくのいい人だった。スーツの裾をやや気にしながら、神妙な面持ちで校長がマイクの前に立った。焦らすような咳払いがあったあと、私たちが聞いたのは、岩のように低い声だったように思う。 「みなさん、入学おめでとう。同時に、君たちには卒業しなければいけないことがある。それは、水やジュースをたくさん飲むことです。もう、必要なとき以外水分をとってはいけません」 体育館はざわついた。声変わりのしていない、男子か女子かも判断できない声が飛び交った。けれどもその中に、大人たちの声はなかった。
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