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ってやっぱり寝室ここだけかっ。
契約したのは秘書なんだから夜のお世話まで引き受けたつもりは無いってばっ!そういう事はそっちのプロに頼んでくれ頼むからっ。
こっちは知ってるんだから!貴方が寄ってくる女性を文字通りとっかえひっかえしてた事を!その犠牲者の一人になるのだけは、断固として拒否させていただきます!
「なら、私は別室のソファででも寝ます!」
「……待て。他の部屋で寝るなら、契約は無効。俺が良いと言うまで、帰さない」
「んなっ!?」
何よそれ!横暴すじゃなくて脅迫でしょうがっ。むしろ最初からこの契約自体わけわかんないのに!人の足元見てるんじゃないわよっ!
キッと睨み付けてやるけれど、社長の顔はいつか仕事の時に見た「やると言ったらやる」という表情で。
うわあすごい見覚えあるわよその顔。
本気だ……この人本気で一緒に寝なきゃ帰してくれない気だ……。
こっちの分が悪すぎる。
「わ、わかりましたよっ! 寝たらいいんでしょ! ここで! もし手出そうとしたら、いくら社長でも急所蹴り上げますからねっ!」
女性として口にすべきでないフレーズを出してしまったのはわかっているけど、こうでも言わなきゃ今の社長はナニするかわからないので、とりあえずの警告をしておく。
言った途端、一瞬ピキっと彼が固まったような気がしたけど、酷く真面目な顔(って普段からそんな変わらないけど)をして「わかった」と返事をしたのでとりあえず信用することにした。私の本気度が伝わって何よりだ。
仕方なくベッドに戻った私を彼は再び後ろから抱きしめてきたけれど、私がもう一度非難の声を上げる前に「おやすみ」と言って眠りについた。
抱き枕使用はどうしても貫き通すつもりか!
って、ものの二秒で寝るなっ!
私寝れないっ。絶対これ寝れないわっ。
そう思っていたのも束の間、やっぱり身体の疲れには勝てなかったのか、機械か何かみたいに規則的に呼吸する彼の体温を感じながら、私の意識はゆっくりと、眠りの中に落ちていったのだった。
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