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そもそもね?
人間一人理解するのなんて一生かけても無理だと思う。
だけど七年一緒にいたのよ?
少しぐらいは判るようになると思わない?
それでも私には、本気でこの人のやる事なす事がわからなかった。
窓から差し込む白い光の筋が、朝が来た事を知らせてくれる。
見える景色は明らかに、スペシャルスイートなホテルの一室で。
体は今も上等な羽布団に包まれて、ほわほわとなんとも心地良い。
……背中にぴったりくっついてるある人物を除いては。
「……再現VTRか」
うんざりしながら自虐の言葉を吐いた。
朝の第一声がこれってどうなの。言いたくて言ってるわけじゃないけど。
この覚えのある状況。ここに来て初めて目が覚めた時も同じような状況だったっけ。
一つ違うのは最初の景色が社長の寝顔ってだけだろう。
って当たり前よね。昨日も社長と寝たんだもの。って違う違う。言い方おかしいし。
ほんと「眠った」だけだもの。寝れないって思ったけどまんまと寝てしまったわ。だって疲れてたもの。
まあいいわ。とにかく起きよう。顔洗ってお手入れしたいし。
そう思って、さっきからホールドされている誰かさんの腕を外そうと試みる。
が、外れない。
だーかーらーっ。どうして外れないのよこれ。
「社長、起きているなら離してくださいませんか」
職場の同僚達にはびびって逃げられた、最上級に冷ややかな声を上司に掛けてみる。
モーニングコールとしては最低な部類に入るだろう。
私を無理矢理拉致して再度秘書契約させた非常識男に、効くとは到底思わないけれど。
「……まだここにいろ」
返ってきた言葉に、軽くどこかが切れた。
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