彼との契約 ~二日目 目覚め~

2/3
前へ
/113ページ
次へ
そもそもね? 人間一人理解するのなんて一生かけても無理だと思う。 だけど七年一緒にいたのよ? 少しぐらいは判るようになると思わない? それでも私には、本気でこの人のやる事なす事がわからなかった。 窓から差し込む白い光の筋が、朝が来た事を知らせてくれる。 見える景色は明らかに、スペシャルスイートなホテルの一室で。 体は今も上等な羽布団に包まれて、ほわほわとなんとも心地良い。 ……背中にぴったりくっついてるある人物を除いては。 「……再現VTRか」 うんざりしながら自虐の言葉を吐いた。 朝の第一声がこれってどうなの。言いたくて言ってるわけじゃないけど。 この覚えのある状況。ここに来て初めて目が覚めた時も同じような状況だったっけ。 一つ違うのは最初の景色が社長の寝顔ってだけだろう。 って当たり前よね。昨日も社長と寝たんだもの。って違う違う。言い方おかしいし。 ほんと「眠った」だけだもの。寝れないって思ったけどまんまと寝てしまったわ。だって疲れてたもの。 まあいいわ。とにかく起きよう。顔洗ってお手入れしたいし。 そう思って、さっきからホールドされている誰かさんの腕を外そうと試みる。 が、外れない。 だーかーらーっ。どうして外れないのよこれ。 「社長、起きているなら離してくださいませんか」 職場の同僚達にはびびって逃げられた、最上級に冷ややかな声を上司に掛けてみる。 モーニングコールとしては最低な部類に入るだろう。 私を無理矢理拉致して再度秘書契約させた非常識男に、効くとは到底思わないけれど。 「……まだここにいろ」 返ってきた言葉に、軽くどこかが切れた。
/113ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1691人が本棚に入れています
本棚に追加