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朝日に瞼が刺激され、瞳を開くと途端目に映った存在に自然と意識が引っ張られた。
「おはよう」
私の視界の半分を埋め尽くす、彼の顔。
笑みすら浮かべず、普段の無表情と変わらぬ顔で朝の挨拶をしてくれているのは、もちろん三嶋社長だった。
まだ開ききっていなかった瞼が、限界まで持ち上がる。
「――――っ!?」
ぎゃあああああっ!
一気に思考がクリアになって、慌ててがばっと起き上がる。朝の光を受ける室内に、ばさりとシーツの翻る音が響き渡った。
ぱくぱくと口を開け閉めしている私に、じっと視線を投げている三嶋社長は、頬杖をついた姿勢でこちらを向いている。
「なっ……何してるんですかっ!」
「何って、君の寝顔を眺めていたんだが」
そうじゃなくて!
淡々と返ってくる返答は、まるで会議中の質疑応答さながらで、慌てるこちらの事などおかまいなしだ。
わなわなと震える身体の奥で、心臓が発作を起こしたみたいに大きな音を立てている。
半身を起こしている私と、横たわったままこちらを見つめる彼との間に、光の筋が差し込んでいた。
目覚めのアップは心臓に悪いのよっ!そして眺めるな!人の寝顔を!
頭一杯の文句を思い浮かべたところで、彼の姿に気が付きぎょっとした。
「っだから!なんで脱いでるんですかっ!」
「だから、下は履いている」
だああああああっ。
先日と同じやり取りに、頭を抱えて蹲りたい衝動に駆られる。
認めたくはないけれど、三嶋社長は就寝時、裸族と化すようだ。
胸元までは羽根布団に覆われているけれど、そこから上には目にも眩しい引き締まった身体がある。
目覚めのアップ、そして目のやり場に困る晒された彼の肩。
慌てて目を背けても、記憶にインプットされた光景も二度目ともなればかき消すことは容易では無くて。
逸らした先に続けて映った彼の喉元に、余計に身体の熱が上がってしまい、なぜか悔しい気持ちになった。
昨日の告白から、まだ一夜明けたばかりだというのに、こんなものを見せられてはさすがにたまったものではない。
むしろなぜ、彼は平然としていられるのか甚だ疑問だ。
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