彼との契約 ~三日目 変化~

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会話が済んだのか、彼が携帯電話から耳を離し机に置いた。 ふうと一息ついてから、背もたれへと身体を沈める。そして一瞬考え込むような仕草を見せると、すぐにまたカタカタとパソコンのキーを叩き出した。 ただ仕事をしているだけなのに、その一連の動作に色めいたものを感じてしまうのは、今朝彼にされた、啄ばむようなキスのせいだろうか。 今朝の口付けは、これまでの深いものとは違い、付き合い立ての恋人達が交わす様な、甘く触れるだけのものだった。 それを思い出すと、なんだかむず痒い様な、頬が熱くなる様な気がした。 彼の横顔に今朝の出来事を思い出していると、突然、三嶋社長が振り向き驚く。 「っ!」 不意打ちの動作に慌てて顔を下げてももう遅い。 束の間合わさった視線に鼓動が大きく跳ね上がっていた。 バレた―――? 内心のパニックを悟られないように、不自然は承知で無言で仕事しているフリをする。 じっと見つめてくる彼の視線を感じながら、キーを叩いてみるけれど、指先が震えているせいか上手く打てず、意味不明な文字が羅列されてしまう。 何してるんだろう。私。これじゃあ意識してるのバレバレじゃない。 それを慌てて消していると、くすりと笑う気配で空気が揺れる。 え、と思わず顔を向けると、三嶋社長がこちらを見つめながら微笑んでいた。 「……可愛い」 そう告げる彼の顔はどこか嬉しそうで。 眼鏡の奥で細められた瞳も、うっすらと弧を描いた唇も、真っ直ぐ私へと向けられていて。 言われた言葉に、火が点いた様に顔がかっと熱くなる。 「な、何を……っ」 ぱくぱくと口を開け閉めしながら羞恥で固まる私に、三嶋社長は小さな笑い声をまた零す。楽しそうに、嬉しげに。 彼を意識してしまっている事、見つめていた事、それを知られている事に、恥ずかしさで一層鼓動が早く大きくなった。 「……嬉しいんだ。君の反応が」 そう言いながら笑みを浮かべる彼を見て、私は自分が甘く蕩ける罠に嵌ってしまった様な、そんな気がしていた。
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