初めての出会い

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僕は神戸にある動物園で飼育されているオオアリクイのポン太郎だ。 最近の日課は、動物園を出て、公園等を散歩しながら外来種のアリを食べることである。 日頃は、大豆や鳥のミンチが入った食虫動物専用のフードというものを食しているのだが、やっぱりアリを食している時の方がどこか幸せを感じられる。 僕を観に来てくれるお客さんは、今まで少なかったのだが、最近、商店街や街中などで見かけるようになったフクロウカフェやハリネズミカフェなどのおかげで小中動物の人気が高くなり、その恩恵で僕を観に来てくれる人が最近増えた。 しかし、ただ僕が餌を食べているだけでは、誰も僕を観続けてはくれないので、20分に一回、仁王立ちし体を大の字にして威嚇するポーズをする。 僕としては、威嚇し強いぞっとアピールしているつもりなのだが、観衆は「かわいい」やら「抱きしめたい」などと言っている。僕としては、男しての尊厳を傷つけられているのだが。 そんな日々を過ごす中、ある夏の日、飼育員と日課の朝の散歩をしていると、現代風の服ではないゴツゴツした人々が公園でたむろしていた。 髭は濃く、顔の彫りが深く、現代日本人には見えなかった。 飼育員の岡部夏美(おかっぺ)が、おそるおそる「おはようございます」と話しかけると、数人がもぞもぞと相談しはじめて、リーダーと思われる甲冑を着た男が、「お主、なんでそのような身なりをしている」と言い出した。
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