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それにともない国を上げて大規模な検閲が行われた。楽器店が廃業を余儀なくされ、名のある音楽関係者は多くが海外へと移った。政府はインターネットの海外への接続を制限し、現存する音楽データの削除したうえで音楽のアップデートを禁止した。
「とんでもねえ音痴がいたんだろ。お偉いさんの孫あたりによ」
「そんな理由でこんなことされちゃあたまらねえよ!」
お前の冗談に大男が大口を開けて笑う。
薄暗い店内にはカウンター六席とテーブル六台二十四席しかなく、そのすべてが埋まっていた。壁には大昔のライブのフライヤーが貼ってあり、客たちはときおり指さしては思い出話をしていた。四十すぎの寡黙なマスターはカウンター内でグラスを拭いている。
カウンター席に座るお前は顔見知りの大男と話をしていた。三十過ぎの大男はソフトモヒカンにアゴヒゲを蓄えていて、顔を逆さまにしてもシルエットは変わらないなとお前は思う。
大男はお前を同輩のように扱っているし、それはお前も同様だった。
お前たちは同好の士だったからだ。
大男はショットグラスをあおる。アルコールの香りがした。それどころかこの店には紫煙が漂ってもいる。
店の隅には小さなステージがある。降りた幕の向こうからセッティングする音がしていた。
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