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お前は彼らに畏敬に似た思いを抱いていた。
「おぶぅっ」
横っ面に、結んで玉にしたマフラーが直撃した。
「またこんなところに出入りして! 電話したのに繋がらないし! もう、帰るよ!」
店の外に出てぼんやりと考えていたお前の前に、真っ黒な長髪をポニーテイルにした少女がいた。お前とそう背丈が変わらず、同年代の女子に比べて長身の少女は眼前で足を止めポニーテイルを逆立てんばかりに怒っていた。
少女はお前の足もとに落ちたマフラーを拾い上げると踵を返し歩き出す。お前は大股で歩く少女のあとを追いつつ声を上げる。
「こんなところとはずいぶんな言いようだな」
「こんなところはこんなところよ。このご時世に集まって煙草とかお酒とかを嗜むのはマヌケがすることなの。ほら、協会員に見つかったじゃない」
「晶華(しょうか)、オマエは俺のツレがマヌケだっていうのか!?」
「アレがマヌケじゃなかったらこの世にマヌケなんかいなくなっちゃうわね!」
ケンカしながら歩くお前たちに周囲の視線がまばらに刺さる。
「今日はいつにも増して突っかかるな……協会員に見つかったのを気にしてんのか? ああ、俺を心配してんだな」
「ああ、マヌケの総本山がここに……」
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