高二 十一月 野分

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「俺が送ります」 「え……でも、委員長も、授業が…」 「風紀には授業免除がある。問題無い。藤宮の荷物取って来ます」 「うん。宜しくね」 「え、あの…」 口を挟む間も無く二人で話を進め、委員長は保健室を出て行った。 「彼、本当に良い子だね」 閉まったドアを見ながら先生が微笑む。 「素直に頼っていいと思うよ?」 「でも…、只でさえ忙しいのに、これ以上迷惑は…」 「こーら」 先生の指が、軽く眉間を突付いた。 「君はまだそんな事云ってるの?何度も云ってるでしょう?誰も迷惑なんて思っちゃいない。彼だってきっとそう。君はもっと我儘になってもいいんだよ。甘えていいんだよ」 眉間に当てられていた指が離れ、髪を優しく撫で梳く。 「忘れちゃ駄目だよ。僕達は皆、君の幸せを願ってるんだって」 「……はい…」 でもね、先生。委員長は何も知らないんだ。 だからこれ以上巻き込む訳にはいかない。 勘の良い人だから、本当は僕の事も気付いているかも知れない。 接触恐怖症だって、何かのトラウマが無ければ普通はあそこまでならない。 僕の身に何かが起こったのはきっと、気付いているだろう。 だとしても、何も云わない彼の優しさに甘えて、僕も何も云わない。 だって知ってしまったら、優しい彼を傷付けてしまうから。
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