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この学園にも見た目が派手で不良っぽいヤツやチャラけたヤツは居るには居るけど、大抵が良いとこのボンボンだからその数は圧倒的に少なく、一般生徒は殆ど関わる事も無い。
だからそいつの派手な見た目にクラスの連中が戸惑い怯むのも無理は無い。
だけどそんな事よりも。
「ほら、自己紹介」
担任に促されて編入生が口を開くけれど。
「………藤宮光希」
無表情のままぼそりと名乗っただけだった。
「それだけか?……まあいい。狭山、狭山浩介ー、立て」
「あっはい」
慌てて立ち上がると、静かな教室に椅子が床を擦る耳障りな音がやけに大きく響いた。
「席は狭山の左隣りな。ついでに、終わったら寮まで連れてけ。あと校内の案内とか説明とかも頼むわ」
「はい」
返事をすると同時に、藤宮と名乗った編入生が席に着いた。
「じゃあこのプリントに二学期の予定が書いてるから、各自一枚ずつ持って帰れ」
教卓の隅に置いた紙の束を指差し「解散」と云った担任に、委員長が慌てて「起立」「礼」の号令を掛けた。
朝はあんなに浮き立ってたクラスメイトは皆、藤宮の事を遠巻きに見るだけで誰も話し掛けて来ようとはしない。
それどころかそそくさと露骨に避けるように教室を出て行くヤツも多い。
「ほい、これお前らの分な」
カズのヤツ、居ないと思ったらプリント取りに行ってたのか。
俺と藤宮の分まで。
「ああ、さんきゅ」
「……ありがとう」
プリントを受け取った藤宮が、無表情のまま小さく礼を云った。
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