2542人が本棚に入れています
本棚に追加
寮監室で藤宮の部屋の鍵を貰い、一緒にエレベーターに乗った。
「昼メシ、良かったら一緒に行かね?」
「……部屋を片付けたら、理事長室に呼ばれてるから」
「じゃあ夜は?」
「……今日は疲れたからいい」
「そっか。初日だもんな。じゃあまた明日な」
十一階のボタンを押した藤宮に笑い掛けて、十階で降りた。
無駄にデカい寮は、一、二階に風呂やら食堂やら色んな施設があって、三階と四階は生徒会役員と風紀の委員長副委員長が一人部屋、残りの風紀委員が二人部屋。
五階から十階までが一般生徒で、基本高校三年間同じ部屋で二人部屋。
十一階は特待生と、何か特別な事情のある生徒で一人部屋になっている。
藤宮は特待生なんだろう。
ただでさえ外部入学試験の難しいこの学園で、編入試験は更に難しいと聞いた。
自室の鍵を開けて、机に鞄を放り出しベッドに仰向けになる。
同室のカズはまだ帰っていない。
多分部活の先輩達と昼は食って来るんだろう。
厭味なくらいの青空に、溜息を吐いて腕で目元を覆った。
藤宮の銀色の髪と冷たい瞳を思い出し、もう一度溜息が零れた。
忘れた事なんて一日も無い。
もう会えないかも知れないけど、せめてもう一度だけでも会いたい。
大きく息を吐いて体を起こし、窓を開けると、夏の湿気を孕んだ風が髪を撫でる。
何処までも続く、高く蒼い蒼い空。
この空の下の何処かにお前が居る。
もう一度会えたら、ごめんと謝りたい。
気付けなくて、ごめん。
守りきれなくて、ごめん。
何処かの空の下、せめてお前が笑っててくれたら。
そう願って、蒼い空を見上げて眩しさに目を閉じた。
◇◇◇
最初のコメントを投稿しよう!