高二 九月  side狭山浩介

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寮監室で藤宮の部屋の鍵を貰い、一緒にエレベーターに乗った。 「昼メシ、良かったら一緒に行かね?」 「……部屋を片付けたら、理事長室に呼ばれてるから」 「じゃあ夜は?」 「……今日は疲れたからいい」 「そっか。初日だもんな。じゃあまた明日な」 十一階のボタンを押した藤宮に笑い掛けて、十階で降りた。 無駄にデカい寮は、一、二階に風呂やら食堂やら色んな施設があって、三階と四階は生徒会役員と風紀の委員長副委員長が一人部屋、残りの風紀委員が二人部屋。 五階から十階までが一般生徒で、基本高校三年間同じ部屋で二人部屋。 十一階は特待生と、何か特別な事情のある生徒で一人部屋になっている。 藤宮は特待生なんだろう。 ただでさえ外部入学試験の難しいこの学園で、編入試験は更に難しいと聞いた。 自室の鍵を開けて、机に鞄を放り出しベッドに仰向けになる。 同室のカズはまだ帰っていない。 多分部活の先輩達と昼は食って来るんだろう。 厭味なくらいの青空に、溜息を吐いて腕で目元を覆った。 藤宮の銀色の髪と冷たい瞳を思い出し、もう一度溜息が零れた。 忘れた事なんて一日も無い。 もう会えないかも知れないけど、せめてもう一度だけでも会いたい。 大きく息を吐いて体を起こし、窓を開けると、夏の湿気を孕んだ風が髪を撫でる。 何処までも続く、高く蒼い蒼い空。 この空の下の何処かにお前が居る。 もう一度会えたら、ごめんと謝りたい。 気付けなくて、ごめん。 守りきれなくて、ごめん。 何処かの空の下、せめてお前が笑っててくれたら。 そう願って、蒼い空を見上げて眩しさに目を閉じた。 ◇◇◇
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