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昇降口の手前、皆が足を止めて幾つかの列になっている事に気付いた。
列の前には左上腕の袖に腕章を付けた十人程の生徒達。
ああ、風紀の定期チェックか。
こっそり嘆息してゆっくりと列に近付いた。
「そこの二年」
低く良く通る声が響き、一際背の高い生徒が僕に近付く。
腕章は赤に黒と金のライン。普通の風紀委員は紺だから、これは風紀委員長の証。
「見ない顔だが、編入生とは君か?その髪は…」
「ほーんと綺麗な髪だよねぇ」
間延びした緊張感の無い声の細身の生徒は、赤に白二本のラインの腕章。風紀副委員長。
「昨日ウチのクラスに来た藤宮光希君。オレは甲斐満。宜しくねー」
「満…。その髪は地毛か?」
眉根を寄せて副委員長を呆れた顔で一瞥して、委員長が僕に鋭い瞳を向ける。
風紀の委員長副委員長二人がこっちに来た所為で、他の生徒達がちらちらと見る。
あまり注目浴びたくないんだけどな。
「……地毛ですが」
「へええ。本物の銀髪ってホント綺麗だねぇ」
「満…、少し黙ってろ。アクセサリーも過剰で派手だな」
「……違反では無い筈ですが」
委員長、真面目だね。
この二人の正反対の空気が、生徒を萎縮させ過ぎずに風紀を上手く機能させてるんだろうね。
だけど僕には極力関わらないで欲しい。
まあこの見た目だから絡まれるとは思ったけど。
「確かに校則に規定は無いが、他の生徒に悪影響を与えたり風紀を乱されるようでは困る」
大丈夫だよ。委員長。
「……誰かと、関わるつもりは無いですから」
そう。僕はただこの空間に居たいだけ。誰とも深く関わるつもりは無い。
この格好はある意味威嚇。
そして僕を守る鎧。
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