高二 九月

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僕の言葉に委員長が僅かに眉を寄せる。 「まあいい。鞄の中を見せて貰う」 最低限の持ち物しか入れていない鞄を黙って委員長に渡した。 別に危険物とか持ち込んじゃいないし、煙草も吸わない。ただ。 「薬か?量が多いな。どこか悪いのか?」 うん。明らかに多過ぎる量の薬の入ったピルケースには何か云われると思っていた。 「……持病持ちなんで。医者に運動は止められてるから、何かあっても走って逃げるとか出来ないですよ。」 暗に“問題行動はしないから関わるな”と云った事に気付いたのだろう。委員長の眉間がはっきりと寄せられた。 「分かった。もう行っていい」 返された鞄を受け取り、小さく頭を下げて昇降口に向かう。 靴を履き替えながら小さく溜息が漏れた。 編入早々の風紀チェックにはちょっと参った。 でもまあ、長い夏休みの帰省で気の緩んだ生徒が妙な物を持ち込む事もあるだろうから、敢えてのこの時期なんだろう。 この学園は他と比べて割と校則が緩く自由だ。 その分授業内容は濃く高レベルだから、実力の無い者は油断すれば直ぐに周りに置いて行かれる。 授業に付いて行けなくなれば落ち零れて自ら辞めるか、問題行動に走る。 特に去年の三年は出来が悪く、停退学者が多かったと云う。 その為昨年度後半から風紀の取り締まりや巡回が厳しくなったと聞いた。
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