2539人が本棚に入れています
本棚に追加
「………本当に、大丈夫か?」
じっと見つめて心配気に尋ねる声に、くすりと笑った。
「大丈夫だよ。ただ此処に居たいだけで、……関わるつもりは無いから」
此処は確かに、辛い事を思い出させる。
だけどそれだけじゃない。
幸せな時間も此処には確かに沢山あったのだから。
「……そうか。どうせなら……少しでも楽しく過ごして欲しいのだが」
それは無理だよ。
だって幸せな思い出が増えれば、その分辛くなる。
相手を傷付ける。
「とにかく、無理だけはしないでくれ。何かあったら直ぐに云うんだよ?」
「うん。分かってる。……我儘云ってごめんなさい。ありがとう……」
笑みを作ろうとして失敗し、辛そうに歪んだ顔で強く抱き締められた。
暖かな腕の中でそっと目を閉じて、もう一度小さく呟く。
「………ありがとう、父さん…………大好きだよ……」
最初のコメントを投稿しよう!