高二 十二月 寒凪

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目の奥を太い針で貫かれるような激しい痛みで目が覚めた。 ずきずきと痛む蟀谷(こめかみ)を両手の指で押さえながら、そっと目を開くと、周りの景色がぐにゃりと歪んでまた目を閉じる。 深い息を何度か繰り返して弾む鼓動を落ち着け、ゆっくりとベッドから下りて這うように机の上に手を伸ばし、目を細めて薬とペットボトルを手に取った。 最近また、頭痛で目覚める事が増えた。 キッチンまでの僅かな距離を移動するのさえ辛い。 起きて直ぐに薬を飲めるように、ペットボトルの水を机の上に置いて休むようにしたのは数日前から。 そのままぺたりと床に座り、ベッドを背凭れ代わりに長い息を吐いた。 学校を休む事は無いけど、視力は日々落ちて目が霞む事も増えた。 冬休みまで一週間。 期限が近付く程に焦りが募っていく。 手術でまた此処に通えるようになればいいのに。 皆の優しさに触れて、そんな欲が出てきてしまった。 皆と一緒に卒業する事は出来ないけど、三学期だけでも。 そう考えて自嘲する。 欲を覚えれば際限が無い。 とっくに覚悟は出来てた筈なのに。
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