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結人君の事件があった次の朝早く、貴浩さんと一緒に第二保健室を訪ねた。
腕に巻かれた包帯が痛々しかったけれど、会長は以前のような笑顔を見せてくれた。
「君を好きな気持は変わらない。でももう無理強いするような事は絶対にしないから、“藤宮光希”としての君と、せめて友人になりたい。……駄目かな」
不安そうにそう云われて、嫌とは云えなかった。
それからは、校内や寮ですれ違っても挨拶を交わすようになった。
柔らかな笑みに、小さく言葉を返して頭を下げるだけで笑顔を返す事は出来ないけれど。
「会長、山城が居なくなってから穏やかになったよな」
運んで来た夕食を一緒に食べながら、浩介が笑う。
最初は皆戸惑って彼方此方でこそこそ話していたけれど、今では以前のように話し掛ける生徒も増えた。
会長の怪我は、表向き本人のミスによる怪我と云う事になっている。
結人君は直ぐに退学処分になったけど、その理由は学園の皆には知らされていない。
浩介にもあの日の事は、詳しく話していない。
「……あのね、浩介。結人君の事で、話しておきたい事があるんだ」
食後のお茶を飲みながら、躊躇いがちに告げた。
あまり人に話す事ではないけど、ずっと味方でいてくれた浩介には、聞いて欲しいと思った。
「一年の時の、写真や噂、強姦未遂、最後の日の事件も全部、……結人君だったんだ」
大きく目を見張り、見る見る内に浩介の顔が怒りに歪む。
「あいつ…っ、絶対に許せねぇ。お前がどれだけ苦しんだか…っ。やっぱ会長か?お前を追い出せば自分のもんに出来るとでも思ったのか?!」
その言葉に目を伏せ、首を横に振って静かに口を開いた。
「……前に話したよね。僕には父が二人居るって」
不思議そうに僕を見る浩介に、苦く笑って続けた。
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