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「佐河の父が事故で死んだ時の、担当医。……結人君のお兄さんだったんだって」
「それが、理由だってのか?何で…」
「……気分いい話じゃないけど、聞いてくれる…?」
黙って頷いてくれたのを確認して、僕は話し始めた。
幼少時の生活。背中の傷痕の理由。
そんな生活から救ってくれた、佐河の父との幸せな日々。
「いつも笑ってて、とても優しい人だった。僕に色んな事を教えてくれた。僕が笑えるようになったのは、お父さんのお陰なんだ。大好きで……本当に幸せだった」
でも五年生の時、突然の事故に巻き込まれた。
手術の後、大丈夫と医者は云ったのに目を覚まさないまま三日後に逝ってしまった。
最後まで謝罪に来なかった被害者家族。
急変した父を放置して看護師と淫らな行為に耽っていた担当医。
僕に笑顔を、幸せを与えてくれたたった一人の大切で特別な人。
通夜の時に院長と共に訪れた担当医の顔を見て、僕は感情の昂りを抑えきれずに傍にあったナイフで斬り付けた。
後で聞いた話では、その医者は女癖が悪く何度も医療ミスを隠蔽していたとの事。
父の場合も死ぬような怪我ではなく、単純な処置のミスだった。
そして父と事故を起こしたのは本当は次男で、それも隠蔽した。
院長の汚職も暴かれ、その病院は潰れた。
結人君の事があって、初めて一橋の父が教えてくれた。
「……刺した後に気を失って、その後の事は覚えてないし、今まで誰も教えてくれなかったんだけど…。その時の怪我が元で、医師生命を絶たれたって…。それからは酒浸りで。結人君は養子に出されてたけど、お兄さんとは仲が良かったらしくて、それで、僕を恨んでたって…」
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