高二 九月  side狭山浩介

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長い夏休みが終わり、始業式前の教室は妙に浮き立っていた。 何でも編入生が来るらしい。 共学なら可愛いコかなって期待も出来るけど、生憎此処は男子校だ。 どんなヤツだろうがどうでもいい。 だけど皆が騒ぐ気持ちは解る。 何せこの学園は小中高一貫で付属の大学まであり、その上中高は全寮制。 中学高校で外部入学生は受け入れてるけど、偏差値と学費の高さにその数は少ない。 つまり周りは大抵のヤツが子供の頃から見飽きた顔ばかり。 そんな環境だと、ほんの些細な変化も娯楽のネタになる。 加えてそんな環境の所為か、同性間の恋愛には大らかだ。 まあ健全な思春期男子が男ばかりに囲まれて生活してれば、女の代わりに性的興味や欲求が同性に向けられるのは仕方無いとは思う。 だから稀に強姦未遂などの事件も起こるけど、風紀が優秀なお陰で今のところ大きな事件は無い。と思う。 「浩介(こうすけ)聞いたか?編入生の話」 手ぶらで教室に入って来たカズが前の席に座るなり笑顔で体ごと向けて来た。 …幾ら始業式だけだからって、鞄くらい持って来ようぜ。 「こんだけ騒いでりゃ嫌でも聞こえるって」 「まーな。けど珍しいよな。二年のこんな時期にさ」 此処に通ってんのは自営業かお偉いさん家のボンボンが殆どだからそう思うのも無理無いかもだけど。 「普通の会社は春と九月に移動が多いから、その関係じゃねーの?」 「ふーん。じゃあ一般庶民か」 悪気が無いのは知ってるけど、“雇われてる”イコール“一般庶民”ってそれ、差別だぞ? そんな感覚の奴等が此処には多いけどさ。 「てかお前も親の会社継ぐなら、そんくらい知っとけよ」 そんな事を話してる間に移動を始めたクラスの連中に続いて、俺達も立ち上がった。
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