高二 九月  side狭山浩介

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代わり映えの無い理事長、生徒会、風紀委員の話と続いて退屈な始業式が終わり、講堂から教室に戻る。 「お前ら席着けー」 かったるそうに入って来た担任は四月に移動して来たまだ若い新任だ。 「可愛い女子に懐かれたくて教師になったってのに、こんなムサイとこに放り込まれちまった。男の相手なんざごめんだっての。ってんでお前ら、俺に迷惑掛けんじゃねぇぞ」 初日の挨拶で(しか)めっ面でそう吐き捨てた担任に呆れたけれど。 意外と授業は解り易く、基本面倒臭がりの癖に気さくに相談に乗ってくれたりと、今では兄や友達感覚で慕われている。 「ねえねえよっちゃん、編入生って何組?!」 「よっちゃんは止めろっつってんだろーが。先生と呼べ。しっかしお前ら相変わらず情報早ぇな」 担任の名前は葉山義人(はやまよしと)。 初日の挨拶に対する嫌がらせの意味で誰かが呼び始めた愛称だけど、今では親しみを込めてそう呼ばれている。 その葉山先生が、眉間に皺を作り溜息を吐きながら続けた。 「ならさっさと進めるぞ。編入生はこのクラスだ。家の都合で北米に居た。向こうの学校の年度変わりに合わせてこの時期の編入になった。虐めんなよ」 期待と好奇心でクラスがざわめく中、開けっ放しのドアに向かって担任が声を掛けた。 廊下から入って来たヤツを見た途端、水を打ったように一瞬で教室が静まり返る。 ぴんと背筋の伸びた綺麗な姿勢。 かなり華奢な体躯に透けるような白い肌。 着崩した制服に、耳には幾つものピアスとイヤーカフ。 何よりも印象的なのは、きらきらと光る白に近い細い銀の髪と。 赤いフレームの眼鏡の奥の、───冷たい瞳。
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