奇妙な同居生活の始まり

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「おい待てよ! ここは俺の部屋だって言ってるだろ! 契約したんだ」 「俺だって契約したんだ。角のいっちばん眺めの良い部屋! 諦めて出ていってよ」 「お前が出ていけよ! 大屋さん! これ法的にどうなんですか!?」 と玄関へ声をかけるが大屋さんの姿が消えていた。 「ほらほらさっさと出ててって。次が決まるまで荷物は置いといていいからさ」 青年は俺の持ち込んだソファに盛大にのけぞって座った。 「やっぱり新居は良いねー」 と良いながらテーブルのコーヒーを見た。 「あ、俺にもコーヒー入れてよ」 「入れてよじゃない、出ていけ!」 「俺18歳だよ? いたいけな若者を追い出すなんてしないよね?」 青年はにこにこと笑顔を向けてくる。 スマホを取りだし大屋さんへ電話をかけた。 「大屋さん、若葉です! こいつ今すぐ追い出してください!」 怒鳴り付けるが平謝りで言い訳もぼそぼそ、ぼそぼそ。 「らちが明きません。弁護士に相談します!」 とスマホを切ると青年がいなくなっていた。奥の部屋で声がして慌てていくと、 「あ、ベッドはそこね。もとからあるベッドはとりあえず隣で良いや」 「おい! 何をしているんだ!?」 「えー、仕方ないだろ。大屋さんの手違いで多重契約しちゃって俺はもう家に戻れないし、あなたも前の家は引き払っちゃったんでしょ?」 「当たり前だ!」 「だから、早く次決めてきてよ」 「お前が別のところを探せ!」 「やだよここ気に入っちゃったもん。まあでも俺の荷物が少なくて良かったよ。早く次見つけて荷物運び出しちゃってよね」 青年は呑気に言いながら寝室を出ていった。 せっかくの優雅な生活の始まりが奇妙なこの青年に犯されていく。 手違いとは言え子供を追い出すのも気が引け、すぐに荷物の運び込みが終わり引っ越し業者は引き上げていった。
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