奇妙な同居生活の始まり

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「そうだ、大屋さんからこれ」 覚書と書かれた紙を2枚渡された。 「家賃は半々で良いって。サインして一枚は控え、もう一枚は出してくれってさ。俺はもう出してきたからよろしく」 と青年は部屋に駆け込んでベッドにダイブした。 「新居最高!」 と叫ぶ声が聞こえ、なんて呑気なんだと頭を抱えた。 「早く出てってよね」 「お前が出ていけ!」 と青年に怒鳴り付けた。 手始めに大屋さんに別の階や別の部屋が空いていないかを聞きに行ったが今は全室埋まっているらしい。覚書だけ提出をして大屋さんの家を出た。 ため息をつきながらスーパーのかごに野菜やお肉を入れていく。キッチンも広い為料理もしやすそうなあのマンションはどうしても捨てがたい。 調味料も買い揃え車で帰宅した。 家の鍵を開けるとテレビの音がした。 「おかえりー」 と青年はテレビを見ながらポテトチップスをつまんだ。 「おい、それ俺が持ち込んだ奴だぞ!」 「だろうね、俺は持ってきた覚えないし」 「勝手に食うなよ!」 ポテトチップスの袋を取り上げた。 「えー、けちぃー」 青年は言って買い物袋を見た。 「おやつ!?」 「夕食だ、おやつだったとしてもやらん!」 「けち! 貧困!」 「馬鹿にするな! だいたい若いお前になぜこの部屋を借りる金があるんだ!?」 「ネットビジネスだよ。そうだ、今日の動画一緒に撮らない?」 「は?」 「動画配信してるんだ。それも収入源だからさ。本当はこの部屋入る所から撮りたかったんだけど、さすがに大屋さんに止められてさ。今日の動画にする予定だったんだけど他のネタより多重契約をネタにしちゃった方が面白いしさ。一緒に出てよ」 「断る。世に顔を出す気はない」 「声は? モザイクかけるからさ」 「嫌だ。だいたい動画で稼いでるって登録者そんなにいないんだろ?」 「そうだね、この前200万人突破したけど。まだまだだよね海外だと1000万人とか居るし」 「200万人!?」 料理をし始めようとしていた手を止めた。 「これでも有名なんだよ。ショコラクリームってチャンネルで、トウヤって名前でやってるんだ」 「興味ない」 「そう言えばあなたは若葉さんだよね」 「ああ、何で知ってるんだ? ってさっき電話で言ったからか」 「うん、まあでも仕方ないか。とりあえず、空いてるあそこの部屋は俺の動画部屋ってことでよろしく!」 「おい勝手に決めるな!」
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