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まったく、壱生くんも壱生くんだ。
巧くんが話す、どんな話題にだって誠実に耳を傾けて、その度に相槌を打ち、「わぁ、すごいね、それでそれで?」と絶妙の合いの手を入れて話を盛り上げる。
それは、いい。
彼の優しさなのだから。
でも、この話はもう止めて、お願い。
再び心の中で叫びながら、恨めしい目つきで二人をみやっても、話に夢中になっていた二人は気付きもしない。
「えっ?そうなの?そこ詳しく知りたい。」
などと、探究心の塊の彼の合いの手が、巧くんのマニアック魂に火をつけたようだった。
あぁ、もうだめだ。
なぜそこの話を深めるのかと思っていたところ、壱生くんがふと何かに気づいたようだった。
「あっ、そうだ。フォンダンショコラ注文しなくちゃね。」
「あっ、そうだった。壱生くんナイス。」
「七海ちゃん!七海ちゃんも食べる?」
心の中で大きく落胆したことなど二人は知らない。
二人の視線がこちらに向けられた中で、何も言わずコクンと頷くしかできなかった。。
この瞬間、延長が決定した。
男性はいつまでも中身は子どもだというが、その通りだ。中学生からまるで成長していない。
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