煽動

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友達になってからは、 3人でこうして集まっては騒いでいた。 もちろん二人は この平凡な主婦には考えられないほど 目まぐるしく働いている。 テレビをつければ、 顔を見ない日はないというくらい 全国を飛び回り仕事をしていた。 そんなに忙しいなら、 大人しく家で寝てればいいのに、 いつも、巧くんからラインで連絡が来て、 こうして普通の主婦の私を呼びつけては、 馬鹿話に付き合わせて、 食べて飲んで、お喋りして帰るのだ。 この二人の熱狂的なファンからしたら、 のたうち回るほどの羨ましい状況だろうが、 すっかりその状況に慣れてしまった今では、 ときおり残念にも思う。 二人のこんな痴態を見るくらいなら、 テレビの前で甘いため息をついて ただ憧れるだけの、主婦のままでいたかった。 雑誌のグラビアを眺めては胸をときめかせ、 いつか会いたいなどと夢を描いていた、 あの何も変わらない日常のほうが、 ずっとずっと幸せだったかもしれない、と。 真面目に悩んでいる私の向かい側で、 怪しげな手つきを繰り返しては笑っていた。 そんな悲惨な光景を目の端なや捉えては、 落胆するのである。 あぁ、なんて馬鹿らしい… いつもみたいに、こんな馬鹿話で終わると思っていた、 もしできるならば、 その時の私に忠告してやりたい。 逃げるなら、今だと。
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