5章 地獄詐欺師の“嘘”

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頭から黒影の手が離れると同時に緋雨は黒影を見上げる。 黒影は緋雨から帽子を取り上げると自分で被り 「そこの建物の間の裏路地に入り2つ目に古ぼけた白いビルがあります。その外階段をのぼり2階に行ってください。正面に扉で4回ノックです」 そう説明した。 「え?あ、あの黒影さん!?」 突然の説明に動揺を隠しきれない緋雨に黒影は 「そこにいるのは白です。『しばらく動くな』と私が指示したと伝えて下さい」 そう続けて 「さぁ、降りて。私は後で合流します」 緋雨は黒影の顔を不安そうに見ながら助手席から降りて窓越しに黒影の顔を見た。 黒影は優しく微笑むと前を向き真剣な顔付きで前を向き車を走らせた。 去っていく車を見えなくなるまで眺めていた緋雨はゆっくりと振り返りパイプが張り巡らされ、まるで衰退した工場地帯のような雰囲気を漂わせるその場所を一通り眺めてから 「裏路地も何もここが既に裏路地みたいです」 そう呟きながら歩を進めた。 「えっと……古ぼけた白いビル……」 辺りを不安そうに見渡すと唯一と言っていいほどこの場所には似合わない白い色の建物があった。 「これかな」 緋雨は不安に思いながらビルに近寄り外階段を見上げ、黒影が言っていた二階を確認してから階段の入口へ視線をやり一度深く深呼吸をしてから階段へと向かった。
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