5章 地獄詐欺師の“嘘”

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小刻みに揺れる車の中黒影は 「俺は過去に一度死んだことになってるからな」 そう言った。 「死んだ?それは私のように昔の名前を捨てたとかではなく?」 「そんな名前どころの話じゃない。俺は昔死んだ。いや、今も死んだことになってるだろう。なんせ、警察に追い詰められた俺は海へと身を投げ、捜査上死体は上がらず、行方不明扱いになる間もなく死亡扱いになったからな」 淡々と語るその話に緋雨は文字通り理解が追いつかなかった。 「ま、急にこんな話されたらそんな顔するよな」 クスクスと笑う黒影は 「戸籍上、前城黒斗という男は海へ身を投げ死亡したことになってる。その為黒斗という名前を今名乗ることは出来ない、その上黒斗という男は口が悪いくせに目上の人にはしっかりと敬語を使う人間。死んだことになった人間が簡単に生きれるわけじゃない、それなら別人として生きる方が手っ取り早いってわけだ。その結果敬語の詐欺師が俺を隠すための演技の人格に選ばれた、という話だ」 そう補足した。
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