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それからしばらくして、時々井戸から不思議な音が響くようになった。
夜中になると、井戸の暗い暗い影のそこから何かのうめき声のような。何かの悲鳴のような。重い重い不気味な音が木霊する。
はて? 風でも吹き込むようになったのかしら?
と首を傾げつつ、私はそれを無視した。
そんな不気味な音が響く中、青年との交流も続いていた。
青年はいつも週末になると井戸を訪ねにやってくる。
彼曰く、学び舎の研究とかでこの井戸を調査しているらしい。来るときにはいつも調査道具だという、大きな荷物を抱えてやってくる。
何故かその荷物は帰るときにはなくなっているのだが、詳細はよくわからない。
「井戸にはあまり近づかない方が良いですよ。危ないので」
とのことなので、青年が来る間私は井戸に近づかないようにしていたからだ。
――そういえば、青年が来るとあの風の音が大きくなる気がするが……。なんとなく、深く考えてはいけない気がして、私はその思考を放棄した。
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