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特別な日
「ホント、ごめんな! 謝るから! もう仕事も落ち着いたし、もう大丈夫だから!」
健二は、カフェからの帰り道、ずっと謝っていた。
「違うんだって、私が悪いの。ごめんね」
少し笑って健二の腕に捉まる。足が痛いのもあるが、何となく繋がっていたいと思った。
我ながら卑怯だな、と思う。
別れを告げようと思っていたことは内緒にして、会えない寂しさで泣いたんだ、と思っている健二の誤解を積極的に解こうとしない自分。
それでも、と思う。この自分勝手な疑問に答えをくれた健二を、愛しいと思うことができたから、気楽さの中に優しさを見つけられるようになったから。
だから許して欲しい、とまた自分勝手なお願いをする。
「健二、困らせちゃったお詫びにさ、腕時計、新しいのプレゼントするよ。格好いいやつ」
いろんな意味を込めた、お詫び。
「え、じゃあさ」
と、健二が笑う。
「俺は、指輪でもプレゼントしようか」
社内の噂話が本当になるかもしれない、そんな私の特別な日。
END
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