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健二の慌てた声がする。目の前にいる彼女が、公衆の面前で泣き出したら、そりゃそうだろうな、とどこか冷静に思う。
それでも涙は止まらなくて。自分が情けなくて、恥ずかしかった。
おろしたてのワンピースはウエストがキツくて苦しいし、履き慣れないヒールで足が痛い。完璧に仕上げたメイクは涙でドロドロだし、香水の香りだってとっくに消えてしまった。
健二が慌てながらも頭を撫でてくれて、そのせいで髪だって乱れまくっている。頼んだブラックコーヒーは苦くて飲み切れそうもない。
何もかもが、もう、めちゃくちゃだ。
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