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押し掛け女房
これまでいろんな奴らと関わってきた。自慢じゃないが、おそらく普通の人よりは多くの価値観や思想に触れてきたはずだ。
幼なじみや腐れ縁。同級生や仇敵。近所の人や親戚の人。出会いはまだある。人間なんて狭い枠に過ぎないのだと気づかされたのはずっと前で、わりと突然だった。
自称幽霊や自称妖怪。ただの変人と裏社会のマジの犯罪者。彼らは平和な世の中や一般に考えられる世間体から離れているが、まだ人間の領域だ。思想がぶっ飛んでても、できることは人間の可能性に限定されていた。
だけど。
地縛霊や浮遊霊。妖怪に天使や悪魔。自称神の凄い何かと、それ同等の無名の異形。
もはや姿が人間に近いだけの全く別の存在たち。
彼らの思想や価値観は、彼らだけにしか共有できないある種の暗黙の了解に似ていた。視点も物の言い方も、立ち振る舞いすら、彼らは彼らでありながら、しかし一個の種として自己の芯を貫き通した何かがあった。
ただの人間がここまでの多種多様すぎる連中と関われたのは、誇りにするべきとか、自慢にしてもいいのかもしれない。
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