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誰に話していいのかまったくわかってすらいないのだけれど。でも、ちょっと寂しい夜、酒の肴にでもして今度また会える日を思い浮かべて楽しむのは、自分と他に数少ない人間くらいしかできないことだろうと、ちょっとだけ思っている。
わりと他の人間も自分と同じだったと気づいたときのショックがデカそうだから、本当にちょっとだけ思っているんだ。
だから、どんな連中とも俺は関わりを持てていける自信が少なからずあった。
自信があったはずだったんだ。
どんな奴ともわりと仲良くなれると、自惚れていた。
それが人間の本来の生活とかけ離れているからだと気づかされたのは、もう数年前だ。仲良くなれるなんて、俺本意の考え方だ。相手も俺を認めなければ仲良くなんてまずなれない。
そんな基本すらわかるのに中学までの歳月が必要だった。
仲良く、なんて。相手がいないとまずできない。
長い前振りはここまでにして、目下の問題をどうにかしよう。仲良くなれるかどうかの以前の問題が立ちはだかっていた。
「ねえ。聞いてる?」
「ちょ、ちょっと待ってくれ」
栗毛のふんわり長髪。いい匂い。小柄だけど肉つきの良さそうな腰。可愛らしい女をまるでそのまま形にしたような女性が、俺の前に立ちはだかっていた。
彼女はバッグ一つで俺のアパートの部屋を訪ねて、開口一番に言ったのだ。
『今日から私と付き合おう。だから同棲してもいいよね。泊めて』
ずけずけと強引に踏み込んできた。
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