押し掛け女房

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 可愛らしさに似合わぬ強気に蹴落とされそうになる。なんとか玄関口で耐えきっているだけだった。  考えを整理しよう。なぜこうなったんだ。  好みすぎて抱き締めたい違う!  落ち着け。どうしてこうなった。  どこで関わりを持った? 思い出せ。どこだ。顔も名前も知らない好みの女が部屋を訪ねたら無条件で喜べるほど性欲を持て余していないぞ。  よーし。いいぞ。落ち着いてきた。さあて、こいつは誰だ。 「あんた誰だよ。なんで俺の部屋に来ていきなり泊めてとか付き合うとか、頭おかしいのか」 「おかしくて結構。でも決めたの。君と一緒になるって。ご覧の通りの君好みの女だよ。抱いていいから」 「声でかい。隣に聞こえたらどうするんだ」 「彼女としてご挨拶」  さらりと言いやがったこの女。頬ぐらい染めるか小悪魔顔するかしたら可愛すぎて許したくなっただろうけど。こいつさっきから真顔なんだよ。  だから、本心で言っているのかどうかさえ、判断ができていない。 「わかった。わかったからとりあえず上がろうか。で、話し合おう。なんで俺のところに来たのか、ちゃんと」 「はーい」  ようやく見せてくれた笑顔は最高だった。抱き締めたくなる衝動を抑えるので精一杯だ。  まだ出会って数秒で心を殺しに来てやがる。     
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