押し掛け女房

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 これもそれも計算尽くだろう。こちらが手を出して既成事実作れば良し、といったところか。  女の強かさというやつだろうか。まったくわからんが。  俺はため息をついた。 「一泊するだけでも俺の部屋だからな。ルールを守って貰うぞ」 「あら。どんな?」  なんて魅力的で挑戦的な目をするんだ。可愛い。  でも、こればかりはしっかりしてもらう。何せ紹介するのは家族だからだ。 「まずは紹介しよう。俺の家族だ」  アパートの壁や床をすり抜けて霊やら妖怪やらが顔を出す。淡い光で天井をすり抜けて天使や悪魔、自称神と名乗る何かもご降臨だ。  排水溝や水道の蛇口、コンセントの穴からは異形のものがぬめりと顔を出してから、部屋で嫌悪感しか生まれない気持ち悪い形を作った。 「訂正させるぞ。同棲じゃなくて、同居な。みんな俺の育て親だ」  親に捨てられ孤児の施設に預けられた俺の友達であり、親の存在たち。  一緒に住もうとする人間なら家族くらい隠すものじゃない。誇りをもって俺は紹介している。  大抵はいつも人間は逃げ出すけど。でも、数人は友人として今も付き合ってくれている。  こいつはどうだろう。     
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