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 お湯が沸いてきて、わたしは立ち上がる。  インスタントコーヒーを入れていると、がたがたと音がして、よれよれで、今にも転ぶんじゃないかと思うほど疲れ切ったタモツがリビングに入ってきた。  ぼうぼうの髪の毛は鳥の巣のようだ。  ネットビジネスとは波に乗るほど忙しいらしく、ほぼ一日中、パソコンから目を放さない。確か今日は風呂も入っていない。  何かの景品でもらったらしい、鬼太郎のちゃんちゃんこ(大人用)を着て、牛乳瓶底の眼鏡の奥の目をしばしばとさせて、タモツは現れた。  夕食時に顔を見せてはいたのだが、iPadに釘付けで、ほとんど会話などなかった。  かろうじて愛梨が話しかけたことについては応じていたものの、本人はごはんを食べたという意識すらないかもしれない。  (エビフライを尻尾から食ってたからな……)
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