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「久しぶり、おう」
と、タモツは間抜けにも片手をあげてみせ、どさりとソファに座り込んだ。
コーヒーを入れて持っていてやると、恐ろしい程の勢いで一気飲みして、熱いと叫んだ。当たり前だ。
ぶくぶくと、キッチンの方では水槽があぶくの音を立てている。
金魚が三匹、ゆらゆらと泳いでいる。アカ、ゆうちゃん、チビ……去年の縁日でとったのは五匹だけど、三匹が今まで生き残り、元気に太っている。強いものだ。
「仕事、これでちょっと落ち着いた。少しゆっくりできるぞ」
と、タモツは言った。
それでわたしは飲みかけのコーヒーをテーブルに置くと、キッチンの冷蔵庫からビール缶をふたつ、持ってきたのだった。
ぷしゅ、と勢いよく缶は開き、わたしたちは乾杯もせずに、淡々と飲み干した。
ごくごくと。
(タモツとは、長年酒を飲んできたなあ……)
妹が飲み友達。
独身なわけだ。
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