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「明日から仕事なんだろ」
無精ひげをはやした顎をぬぐいながら、タモツは言った。
ほどほどにしとけよ、さっさと寝ろー。
「タモツも風呂に入ったら。愛梨に嫌われるから」
言い捨てて部屋に向かいかけ、わたしはふっと足を止めた。
振り向くと、明るいリビングのソファで、タモツがうまそうにビールを飲み干している。
「タモツー」
「なんだよ」
「愛梨が学校にいったらさ、授業参観とか、運動会とか、いろいろあるじゃん」
なんだよ、と、タモツがいぶかしそうに目を細くした。
わたしは言った。
「とりあえず、頼むよ」
暗い寝室に入ると、愛梨が健やかに眠り続けていた。
その隣に自分の寝床を述べながら、ほどよく酔った頭で、わたしはまた思い出した。
深い、闇の、赤い、目――。
(愛梨の運命、愛梨の幸せを妨げるもの)
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