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 「ママ、またごはん残してる」  すっかり身支度を整えて、いつでも出発できる様子の愛梨が、わたしの皿を見て膨れた。  嫌いな食べ物を残す子供を怒るママの図、ではなく、ごはんを食べない母親を咎める保育園児。この変な風景が、このところのうちの定番となっている。  「ダイエットダイエット」  と、わたしはごまかす。  食べれられないわけではないのだけど、食べても全く美味しくないので、自然、箸が鈍るのだ。  目玉焼きも、パンも、砂の塊を噛んでいるような味気なさだった。  久々にゆっくりと朝を過ごしているタモツが、「ん?」という顔でわたしの食事を覗き込み、眉をひそめた。  「体力勝負の介護職が食べないで、よく勤まるな」  と、言うので、わたしは肩を竦めて見せた。  ママァ、と、小言を続けようとする愛梨を黙殺し、せっせとテーブルの上の皿を片づけた。
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