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(しっかし、本当に笑わないなぁ)
皿を洗いながら、食器乾燥機の向こう側のリビングを眺め、わたしは溜息をついた。
愛梨はこのところ、本当に笑わない。
笑うにしても、大人びた微笑みか、テレビを見て笑い転げているか――つまり、わたしに対して無償の笑顔を向けてくれることがなくなったのである。
(昔は保育園に迎えに行くだけで、ママ、ママって、満面の笑顔だったのにな)
歌のおにいさんが元気よく歌っている。
それを、無言で淡々と愛梨は眺めていた。
唐突に電話が鳴った。
タモツの電話である。
「宇宙戦艦ヤ○ト」が勇ましく鳴り渡った。いつもながら恥ずかしい着音だと思う。
ちらっと愛梨がソファ越しに振り向き、朝食のテーブルで足を組みながら電話を取るタモツを見上げた。
「……あ、うん」
タモツは喋っている。
いつもの、ぼんやりとした、覇気のない喋り方だ。仕事のこと――では、なさそうだ。
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