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「……同級生の、畑中芽衣さんだよ」
のっそりと玄関に来ていたタモツが、ぼそっと言った。
その名前に聞き覚えがあり、わたしはもう一度相手を見直す。すっかり成熟した大人の女になっているけれど、よく見れば目の感じや表情に見覚えがあった。
畑中芽衣。
タモツが高校時代に付き合っていた、ガールフレンドじゃないか。
……。
(未だに畑中姓ということは)
「ま、入ったら」
タモツが棒のように突っ立っているわたしを肩でよかして、畑中さんを部屋に招き入れた。
あんまりゆっくりもしていられないのよ、仕事でこっちに来ているものだから。
畑中さんはそう言いながらも、嬉しそうにリビングに通される。
「……」
ぼんやりとした表情で愛梨は立ち尽くしていた。
そろそろ行かねばならない時間だ。
「さ、愛梨」
わたしは愛梨の背中を押した。
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