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「……あ、でも俺。
もう一度だけ小夜を泣かせちゃうかもしれない」
「えっ?」
びっくりする私に、久我さんは耳元で囁いた。
「小夜、目を瞑って」
……え、っ?
……っ!?
「嘘、でしょ? 」
私の薬指に、硬くひんやりとした感触。
彼の緊張までもが、その指先から伝わってくる。
「……嘘、久我さん? 」
「いいよ。目を開けてごらん」
「……久我さん、っ! 」
それを受け取った私の指先も震えていた。
言葉を失った私は彼を見上げる。
久我さんは、優しい眼差しで私を見つめていた。
「小夜はもう、俺だけのもの……っていう証。
二人で幸せになろうね。
愛してるよ、小夜。
もう絶対に離さない。いいよね?」
重なった唇に、温かい涙の味。
それはきっと世界一、幸せなキスの味。
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