明陰の志郎

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 田山「しかし、実際がところ、東天の生徒なら、引く手あまたでしょうに。なんで、ウチなんかに・・進学校ってわけでもないし」  晶子、不意に立ち上がる「うう~む」  教頭、駆け出した晶子の背中に声をかける「水戸先生、どうしました、いったい。ああ、行ってしまった。何を考えているのか」  田山「彼女のアレは、いつものことじゃないですか。しかし、教頭、確か、彼はあの東天でも有数の英才なんでしょ?どうして、ウチなんかに」  教頭「全国模試で十指に入ると聞いていますヨ、彼は。まあ、その・・」  田山「わけあり、なのですか?ああ、それでウチで唯一の進学クラスじゃなく、水戸先生のところに?」  教頭「様子を見て、進学クラスに移ってもらうつもりですけどね」 数学の授業中  椅子の上で胡坐をかいて座っている志郎。目は半眼。おきているのか、寝ているのか、わからない。  教師、薄笑いしながら志郎を指名する「君、この問題、答えられるかな」  志郎「はい」  声「あ、あいつ、起きてたんだ」  黒板に無表情で向かい、さっさと書きだす志郎。書き終わると、無表情で席に戻り、もとの姿勢に戻る。  教師驚いて「・・・正解だ、さすが東天」  放課時間。志郎は足を下ろし、本を読んでいる  男生徒、声をかける「江戸崎君、すごいね、君」  志郎「そうかな、君は?」  貴「始めまして、僕は、岡本貴」  志郎「ふうん」無視して本に目を戻す。  学術書、ページを繰る手が早い  貴「授業中の姿勢、ヨガ?」  志郎「・・まあ、癖、でね。そんなこと?」そのまま、続ける  貴「何か、行をしているの?」  志郎「どうして、そんなことを?」  貴「東天って、なんか、生徒に色々修行をさせるらしいじゃないか。それで」  志郎「興味あるのか?」  貴、大きくうなずく「うんうん」  志郎「それなら、東天にいけばいいのに」  貴「それができたなら、ここにはいないよ~。そうでなくても競争率高いのだから、何しろ東天ならこの国で出世間違いなしだからね。行政幹部、企業の経営陣間違いなし」  志郎「そうでも、ないよ。結局、競争に負けた卒業生も少なくないんだから」  貴「それでも、みんなの憧れの場所なんだけど」  志郎「外で、そう考えているのがいいよ」  貴「どんな修行をするの?だから、エリートになれるんでしょ?どんな、ヨガ?」
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