明陰の志郎

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 志郎「そんなところに、よく進学してきたものだな、怖くないのか?」  英明「ただの噂だからね。それに、この世の中、それくらい図太くないと生きていけないだろう?」  志郎「それは、いい心がけだと思う。”あいつら”は、健康な心の持ち主には影響力を持たないものだからな」  英明「健康な心の持ち主、か。心正しいとか言わないのかい?」  志郎「正しさってのは、生まれた場所によって微妙に変わるからな。そんな不安定なものよりも、体と一緒だ」  英明「体と?」  志郎「そうだ。体が健康なら、おのずから病原菌にやられることはないのと同じ」  英明「心が弱っていると、悪霊にやられる?」  志郎「元気ならホラー映画も、笑い飛ばせるようなものさ」  英明「正しさ、ではない?」  志郎「正しさも必要さ、悪霊にやられたら何が正しいのかわからなくなっちまうからね。でも、自分の心の健康さを見るための物差し。それにあまりこだわると、それはそれでおかしくなっちまうということ」  英明「それは・・」  貴「陰陽道・・」  志郎「明陰道」  貴「そうそう、それでしょ?彼、東天で色々学んだり修行しているみたいなんですよ、部長。あすこは、そういう学校なんですって」  英明「そうなんだ・・もしかして、それで、人間の潜在能力を引き出すとか」  志郎「どうして、それを?」  貴「ちなみに部長の得意分野は、密教とか、山伏、ヨガとか、超心理学とか、ああ、陰陽師も守備範囲」  志郎、背中を向ける「ふうん、興味ない」  貴、歩き出した志郎に声をかける「あ、江戸崎君」  どすん  志郎にぶつかる女生徒。そのまま、こけて、尻餅。スカートの間からパンツが見える  貴の股間反応する  祥子、しかし、あわてていて気にした風も無く、ずれたメガネをかけなおし、志郎を見上げる「あ、ごめんなさい」  志郎、冷めた声「ああ、いいよ、別に」  祥子「部長、”モー”から原稿の催促です。締め切り、過ぎているけど、まだ届いていないからって」  英明「すまない。これから書き上げるから。資料整理、手伝ってくれる?」   貴「あの不思議雑誌の”モー”知ってる?部長は、あすこに原稿入れているんだ。もちろんペンネームなんだけど。すごいでしょ」  志郎「別に、興味ない」
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