受難・・・そして絶望

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物的証拠が無く、 容疑者のアリバイも有る・・・。 警察としても社長に対して、 これ以上の追及は、 不可能と判断しての決断なのだろう。 「警察にそう言われちゃったら、  泣き寝入りするしかないんだな~、  とか考えてたら何にもやる気出なくてさ。  そんでアタシ馬鹿だからさ、  様子見に来てくれた彼氏に、  思い切って言っちゃったのよ被害の事。  そしたら、  少し考えさせてくれって言って、  出てっちゃって・・・。  (しばら)くしたらメールで、  別れようだってさ・・・。  信じてたんだけどな~。」 そう言って小夜さんは天井を見上げた。 その眼からは涙が(あふ)れ出してきていた。 「何でアタシが・・・、  こんな思いしなきゃなんないのよ・・・。」 小夜さんは声を(ふる)わせてそう言って、 嗚咽(おえつ)し出す・・・。 「小夜さん・・・。」 摩子が(たま)らず小夜さんを抱き締める。 その涙を見て私は立ち上がった。 絶対に許さない! スマホを取り出して守屋に電話を掛けた。 『どうだ?  何か聞きだせたか?』 電話に出た守屋は呑気(のんき)にそんな事を口走る。 その時に私の頭から、 『プッチ~ン!』 の擬音が飛び出したのが、 端から見てる人には見えたかも知れない。 電話口で怒鳴るように言った。 「今すぐ帰ってきて、  これから緊急幹部会議よ!」
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