悪王

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「社長、  派遣社員の佐倉小夜が、  面会を求めておりますが・・・、  如何(いかが)(いた)しましょう?」 秘書の宝陽(ほうよう)(まい)が、 私に指示を求める。 「予定までまだ時間は有る、・・・通せ。」 「(かしこ)まりました。」 宝陽は一礼して下がる。 全く・・・、 何時(いつ)見てもイイ女だ。 手が出せないのが惜しい。 しかし、しつこいな佐倉も。 いい加減諦めたらどうなんだ? 「社長・・・、  お連れしました。  どうぞ皆さんお入り下さい。」 何? 皆さんだと? 弁護士でも連れて来たのかと思い、 入り口を見た。 佐倉の他に若い女二人と高校の制服を着た男女・・・。 「お供を引き連れての御出勤(ごしゅっきん)とは・・・、  良い御身分(ごみぶん)だな佐倉君?」 「(ひど)い言い方しますね社長・・・。  私にあんな酷い事をしておいて・・・。」 「おいおい、()()かりは()せ。  また君の私に襲われたとか言う妄想話かね?  警察も君の虚言より、  私の何もしていないと言う証言を信じて、  捜査を打ち切ったと言うのに・・・、  宝陽君・・・、  私のあの日のスケジュールを、  皆に教えてやってくれ。」 「はい社長。  5月18日は午後6時から午後9時まで、  料亭『福良津(ふくらづ)』にて、  多田野社長と利杉社長の御二人と、  会合(かいごう)となっておりまして、  その場にずっと居た事は、  多田野社長と利杉社長も、  警察に事実として証言されてます。」 「そんなの!  そう証言するように戸繰社長が、  二人に指示を出したんでしょ!」 「いきなり無礼な事を言うな!  誰だね君は?」 「有鐘大法学部の九条です。」 「法学部の学生なら、  名誉毀損くらいは知ってるだろ!  私は兎も角、  多田野社長と利杉社長を、  嘘つき呼ばわりする事は許せんな。」 九条とか言うガキは、 私の言葉に少し(ひる)んだのか、 悔しそうに口許(くちもと)(ゆが)め、 宝陽の方へ振り返り、 「秘書さんも同じ女性としてどう思いますか?  戸繰社長のやった事は許せないでしょ?」 そんな問いを投げ掛けた。 「私の認識ですと、  佐倉小夜さんは派遣期間延長の為に、  そのような作り話をしているのだと、  思っておりますが・・・、何か?」
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