悪王

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宝陽の言葉にショックを受けたのか、 九条とか言うガキは、 無言でソファーに腰を降ろす。 「あの~。」 何だ今度は? 「社長さん、SNSに載せたいんでぇ~、  一緒に写真撮って貰いたいんですけどぉ~。  良いですかぁ~?」 突拍子も無い発言に、 「えっ?」 返答に詰まってしまった。 「ダメ・・・、ですか?」 眼鏡を掛けたその女を良く観ると・・・。 良い(からだ)をしている・・・。 化粧をしたらこの女・・・、 化けるぞ。 「あ、あぁ、構いませんよ。」 にこやかな笑顔を作り、 (こころよ)く了承してやった。 「先輩~!  何しに来たんですかぁ~!」 ガキが立ち上がって怒鳴ってるが・・・、 「こんなチャンスでも無いと、  蔵武建設の社長さんの様な・・・、  セレブにお会い出来無いからね~。  私も来年就職活動しなきゃなんないし~、  蔵武建設の社長とのツーショットなんて、  スゴい武器になるわよ~!  詩夜璃~、アンタも一緒に撮ってもらったら?  そんな派遣女の妄言(もうげん)信じる方が、  どうかしてるわ。」 「そんな・・・。」 ガキはそう呟いて茫然とする。 佐倉は(うつむ)いたまま、 身動(みじろ)ぎ一つ出来ずに居る。 「君の名前は何だね?」 「栄大(えいだい)三年の青池真璃(あおいけまり)です~。  あっ、立って握手してる所を撮らせて貰って良いですかぁ~?」 「ああ、構わんよ。」 私は立ち上がって青池の隣に並ぶ。 「じゃあ、失礼しまぁ~す。」 青池は私に抱きつく様に、 ピッタリとくっつき、 顔を寄せてスマホで自撮りする要領で、 角度を変えながら何枚も撮る。 やっぱり若い女は良いなぁ。 この女なら就職をエサに躰を要求しても、 佐倉の様に断ったりせんだろうな。 そう考えていたら、 青池は体を離して私の手を握って、 「あ、摩子ちゃん。  全身の写真も欲しいから、  何枚か撮ってくれない?」 あ、そう言えば握手の写真だったな。 「ハイ、ハ~イ!」 女子高生の子がデジカメで、 私達の周りを撮りながら回る。 佐倉達の方に目を向けると、 九条とか言うガキが(うつむ)いて、 両手で顔を(おお)っている。
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